外貨建て円払いの賃金

労働基準法上、賃金は通貨で支払わなくてはなりません(法24条1項)。この「通貨」には外貨は含まれません。ですので、賃金を「月3000米ドル」と契約して毎月3000米ドルを払うというのは、法24条1項に違反します。この違反には、30万円以下の罰金という罰則があります(法120条1項1号)。

では、賃金を「月3000米ドル相当の日本円(毎月の給料日の為替レートで換算)」とするのはどうでしょうか。

もともと、通貨払いが強制されるのは、現物給与を警戒しているからです。現物給与の場合、その物の価格が安定していなかったり、現金化が難しかったりするという問題があります。外貨についても、米ドルではなく日本と国交のない国の通貨の事例を考えてみると、法が日本円で払えと強制する意味も分かります。

上記の例では、支払が円ですので、現金化が難しいという問題はありません。しかし、価格が安定していないという問題は残ります。米ドルだから問題がないという切り分けは、外貨ごとの検討が必要となり、外貨を一括でだめと言っていることとズレが生じてしまいます。

規制の目的に鑑みれば、外貨建て円払いも禁止されていると考えて対応すべきではないかと思います。

なお、労働者が同意していればよいではないかという考え方もあり得ます。しかし、労働基準法が法で定める基準に反する労働契約を認めていないことから(法13条)、その考え方には疑問が残ります。